ノンフレーム工法について

Q&A

C-1 補強材を1辺2mの正三角形に配置する理由は?

ノンフレーム工法は、鉄筋挿入補強土工法に位置づけられます。
鉄筋挿入補強土工法での補強材間隔は、1m〜2mとされています(※)。
本工法の場合、自然斜面で樹木等を避けて施工することから、2mを標準(最大)としています。
また、1本の補強材の影響範囲が同じ大きさの円周内であると仮定すると、各補強材の効果範囲を最も効率よく発揮できる平面的な配置は、正三角形になります。
以上のことから、2mの正三角形を標準配置としています。

(※)新・斜面崩壊防止工事の設計と実例−急傾斜地崩壊防止工事技術指針−参考編
(国土交通省河川局砂防部監修)
切土補強土工法設計・施工要領
(東日本高速道路(株)、中日本高速道路(株)、西日本高速道路(株))

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C-2 補強材の長さと間隔は、どのようにして決めるのですか?

計画安全率を確保するために必要な抑止力について、補強材の長さと間隔を決定しなければなりません。
鉄筋挿入工法における崩壊パターンには、「補強材の引き抜けによる崩壊」と「移動土塊の抜け出しによる崩壊」があります。
特に自然斜面では、移動土塊が多孔質で軟弱であることから、移動土塊内の補強材と土砂との周面摩擦は小さく、移動土塊と補強材との間に十分な補強効果が期待できず、移動土塊が抜け出す可能性が大きくなると考えられます。(図−1参照)

図−2に、基本的な補強力の発生メカニズムを示します。

補強材が地山の変形、滑動によって受ける引張力は、図−3に示すように、

(1)移動層における引抜き抵抗力(抜け出し抵抗力)   T1
(2)不動層における引抜き抵抗力(引き抜き抵抗力)   T2

を考えることができ、この他補強材の材料の面から決まる

(3)補強材の許容引張り力   Ts

とがあり、安定性の検討に使用される補強材の引張り補強による許容補強力Pyは、これらのうち最も小さいものとします。
補強材の諸元を決定するにあたっては、少なくとも補強材が定着地盤から引き抜けられず、曲げ変形に対して十分な根入れ長を有していることが必要です。

これらを照査して、補強材の間隔と長さを決定します。

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C-3 頭部連結材(ワイヤロープ)の効果について

頭部連結効果とは、補強材個々の動きを連結材によって拘束し(その結果張力が増加する)、補強材を挿入した範囲を一体化する効果と考えられます。
この効果を確認するために、図-1に示す模型実験を行った結果を図-2に示します。ここで、吊り角度が大きいほど斜面抑止力が大きいことを示しますが、補強効果が高いことが分かっております。
詳細は、ノンフレーム工法設計施工マニュアル(H18.4)P64〜68をご覧下さい。

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C-4 すべり面の判断は、どのようにするのですか?

現地踏査を行ない、現斜面状況および過去の崩壊形態を把握し、サウンディング等土質調査によってすべり面を推定します。
特に斜面の表層部の調査に用いられる「簡易動的コーン貫入試験」では、その扱い易さから、斜面崩壊地の風化層の調査にも使用されています。

「地盤調査法」(地盤工学会)では、以下のとおり紹介されています。

大久保等によると、千葉県の第三紀泥岩地帯での観測結果より、Nd<5を表土、5≦Nd<30を風化層、30≦Ndを基岩と区分できるとしている。また愛知県小原村における観測結果より、Nd<5を表土、5≦Nd<20を強風化層(まさ)、20≦Ndを弱風化層(基岩)としており、小原村の場合、表土層の崩壊、表土層と弱風化層の一部が崩壊している。

ノンフレーム工法のこれまでの実績では、すべり面をNd=20〜30の値で推定するケースが多いようです。

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C-5 地盤調査資料がない場合の定数の決め方は?

各種基準・指針等に記載されている土質定数を参考にしてください。なお、実際の適用にあたっては、これらの値を参考にして、現地の地盤状況等を総合的に鑑みて土質定数を決定しなければなりません。

一例を下記に示します。

設計要領第一集 土工編
(東日本高速道路(株)、中日本高速道路(株)、西日本高速道路(株)) P1-44より

(表1-16 土質定数)

種類 状態 単位体積
重量
(kN/m3
せん断抵抗角
(度)
粘着力
(kN/m3
地盤工学会基準注2)
盛土 礫および
礫まじり砂
締固めたもの 20 40 0 (G)
締固めたもの 粒径幅の広いもの 20 35 0 (S)
分級されたもの 19 30 0
砂質土 締固めたもの 19 25 30以下 (SF)
粘性土 締固めたもの 18 15 50以下 (M),(C)
関東ローム 締固めたもの 14 20 10以下 (V)
自然地盤 密実なものまたは
粒径幅の広いもの
20 40 0 (G)
密実でないものまたは
分級されたもの
18 35 0
礫まじり砂 密実なもの 21 40 0 (G)
密実でないもの 19 35 0
密実なものまたは
粒径幅の広いもの
20 35 0 (S)
密実でないものまたは
分級されたもの
18 30 0
砂質土 密実なもの 19 30 30以下 (SF)
密実でないもの 17 25 0
粘性土 固いもの(指で強く押し多少へこむ)注1) 18 25 50以下 (M),(C)
やや軟らかいもの
(指の中程度の力で貫入)注1)
17 20 30以下
軟らかいもの
(指が容易に貫入)注1)
16 15 15以下
粘性土
およびシルト
固いもの
(指で強く押し多少へこむ)注1)
17 20 50以下 (M),(C)
やや軟らかいもの
(指の中程度の力で貫入)注1)
16 15 30以下
軟らかいもの
(指が容易に貫入)注1)
14 10 15以下
関東ローム   14 5(φu) 30以下 (V)

注1: N値の目安は次のとおりである。
固いもの(N=8〜15)、やや軟らかいもの(N=4〜8)、軟らかいもの(N=2〜4)

注2: 地盤工学会基準の記号は、およその目安である。

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C-6 移動層の粘着力を逆算で求めるのは、問題はないのですか?

確かにφをN値から算定する方法は、砂質土を対象としており、土の強度を評価するときには、一般的にはc=0なります。

ところで、この値をそのまま自然斜面の安定解析に用いると、ほとんどの斜面で安全率が1以下となり、計算上その斜面は崩壊していることになります。しかし、実際はかなりの急勾配でも安定している自然斜面が多くあります。

そこで、その安定させている抵抗力を「見かけの粘着力」という値で評価する方法が、cを逆算で算定する方法であると考えています。

この「見かけの粘着力」は土自体の強度の他に、すべり面の不均一性、移動層の不飽和特性による地盤強度のばらつき、植物根系の影響等を、一切含めた値になると考えられます。

こうしたことから、本工法の設計に当たっての地盤定数は、基本的には「設計・施工マニュアル(案)」(H26.4版)p16に示す試験方法や各種基準により設定しますが、N値から設定せざるを得ない場合は、砂質土に限り、一般的に用いられているφ=+15でφを求め、逆算にてcを求めています。

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C-7 岩盤斜面に適用するときの注意点は?

岩盤斜面の表層部が風化により土砂化して、表層崩壊の恐れがある場合に適用します。その場合、中抜け防止および表層の侵食防止のために、緑化工等を併用します。

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C-8 岩盤斜面に適用するとき、設計の考え方に違いはありますか?

ノンフレーム工法は、土砂を対象とした補強土工法に属する工法です。
岩盤部に使用する場合においても、表層部が風化により土砂化して表層崩壊の恐れがある場合に適用するため、基本的には設計の考え方に違いはありません。

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C-9 補強材1本当たりの抑止力は、通常どの程度ですか?

現場の土質条件にもよりますが、これまでの本工法の実績より、補強材1本当たりの抑止力は10〜20kNを一つの目安として下さい。

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C-10 設計は各測線毎に行なうのですか?

地盤条件や横断図、施工面積を考慮して、計画範囲をブロック分けし、各ブロックにおける代表断面(最も抑止力が大きい断面)で検討します。

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C-11 グループ効果は、考慮しなくてよいのですか?

補強土工法は、グラウンドアンカーと異なり、グループ効果を考慮した設計を取り入れていないことから、本工法においても考慮していません。

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C-12 補強材長の設定の仕方は?

補強材長は「移動層厚」+「定着長」+「余長(地表面長)」から求められた長さを、50cm単位に切り上げた値で決定します。

このとき、「定着長」は最低100cmとし、「余長」は17cmです。

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C-13 補強材の最低定着長を1mとしている理由は?

補強材の最低定着長については、下記の指針等の内容を参考にして1mとしています。

  • 新・斜面崩壊防止工事の設計と実例−急傾斜地崩壊防止工事技術指針−参考編
    (国土交通省河川局砂防部監修):
    「一般に全体の長さは5.0m以下とするが、すべり線以深は1.0m以上とする」
  • 切土補強土工法設計・施工要領
    (東日本高速道路(株)、中日本高速道路(株)、西日本高速道路(株)):
    最低定着長についての記述はないが、「表4.9.1経験的設計法諸元」の表中「補強材長2〜3m」の注釈で、「深さが1mであると予想される場合は2m、深さが2mであると予想される場合は3mを目安とする」とあることから、「経験的設計法」を適用する場合は、定着長1mが目安と考えられる。

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C-14 施工面積の算出根拠について

施工面積は、斜面安定化を図る施工計画範囲の展開面積となります。
設計時においては、平面図、地積図等によって展開面積を算定しますが、実際の施工においては、斜面の不陸や形状によって、展開面積が設計時と異なる場合があります。

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C-15 軟弱地盤においても、支圧板と補強材の効果は期待できますか?

自然斜面を想定した、軟弱な地盤での模型実験および現地実験によって、支圧板の支圧効果および補強材の補強効果を確認しています。

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C-16 設計引張力に対する支圧板の強度を検討しなくてもよいのですか?

支圧板仕様は、補強材の許容引張耐力に対応する強度を満足するようその構造を決定しています。従って、許容引張力より小さい設計引張力に対しては、検討の必要がありません。

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C-17 支圧板の大きさは、どのように決定したのですか?

支圧板の形状・寸法は、自然斜面での作業性、補強材間隔等を考慮して、軽量(20kg以下)で、できる限り大きい支圧面積(0.22m2:50cm四方相当)を設定し、模型実験等により、その効果を確認し決定したものです。

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C-18 打設角度は、どのように設定すればよいのですか?

設計時においてすべり面は、調査データ、斜面勾配、崩壊履歴などを参考にして、想定します。

打設角度は、すべり面が、直線すべりの場合はすべり面に直角に設定し、円弧すべりの場合は設計円弧の上端と下端を結んだ線分に対して直角に設定します。(図-1、図-2参照)

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C-19 地震時の評価は、どうしているのですか?

ノンフレーム工法の設計においては、通常は地震時の検討は省略しています。
ただし、発注者から地震時の検討を求められた場合には、震度法によって照査することとしています。
なお、1995年1月の阪神淡路大震災で被災した地域内で補強土工法が採用された6ヵ所を調査した結果によると、損傷が認められないか、または軽微であったとの報告がされています。

断面諸元と推定加速度(阪神大震災)

地点 法面高さ
(m)
法面勾配 土質 補強剤 補強材 表面工の厚さ
(mm)
永久

仮設
推定水平加速度
(gal)
材種 直径
(mm)
間隔
(m)
長さ
(m)
1 20 1:0.5 風化花崗岩 ネジ節
異形棒鋼
25 V=1.25
H= ―
5.0 50
モルタル吹付け
永久 350
2 4 1:0.4 まさ土
(盛土)
ネジ節
異形棒鋼
29 V=1.5
H= ―
4.0 300
コンクリート板
永久 300
3 3 1:0.4 沖積砂層 ネジ節
異形棒鋼
- V=1.5
H= ―
5.5 180
コンクリート板
永久 700
4 10 1:0.3 段丘レキ層
+風化花崗岩
異形棒鋼 22 V=1.5
H=1.5
6.8 100
モルタル吹付け
仮設 500
5 7 1:0.6 段丘レキ層
+風化花崗岩
異形棒鋼 22 V=1.5
H=1.5
2.0 100
モルタル吹付け
永久 500
6 9 直壁 大阪層群
砂・粘土
異形棒鋼 22 V=1.5
H=1.5
6.5 100
モルタル吹付け
仮設 200

出典:地山補強土工法に関するシンポジウム
発表論文集(平成8年)(社)地盤工学会

こうしたことから、「切土補強土工法設計・施工要領」(東日本高速道路(株)、中日本高速道路(株)、西日本高速道路(株))では、耐震設計については、基本的に行なわないものとしています。

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