Q&A

施工

Q1

自穿孔の施工品質は、どのように確保されているのですか?

A1

本工法では、次のように施工品質の確保を図っています。

  1. 削孔径(ビット径)をφ50としています。
    本工法においては、孔壁と補強材(φ28.5)との隙間を確保してスライムの排出を確実にし、グラウトの“かぶり”を確保するようにしています。
  2. 削孔時のスライムの排出を確実にするため、スィベル(削孔機とは別に、大量のエアを直接ロッドに供給する治具)を使用することを標準としています。
  3. 削孔機は、レッグハンマの「補助レール付」を標準としています。
    これは、削孔の直進性を確保し、削孔角度を安定させる為です。
Q2

補強材の防食は?

A2

本工法に使用する標準的な機器を次に示します。

機械名称 仕様・規格
レッグハンマ(補助レール併用) 30kg級
グラウトポンプ 10~30リットル/分
グラウドミキサ 1槽または2槽、100~200リットル
コンプレッサ 7.5~10.5m3/分
給水ポンプ 口径50mm
かしめ機 オグラ製
スィベル 岡部製
トルクレンチ 50~500N・m程度、ヘッド口幅38mm
確認試験用機器 油圧ジャッキ・油圧ポンプなど
Q3

施工手順は?

A3

一般的な施工手順は、つぎのとおりです(自穿孔方式の場合)。

補強材打設位置の決定

樹木や石等の障害物がある場合は、これらを避けて位置決めを行います。

仮設足場の設置

施工品質確保のため、単管足場による設置を標準とします。

補強材打設

所定の角度で打設します。

グラウト注入

孔内清掃を行います。
リターンを確認し、必要に応じ二次注入を行います。
速やかにシースを取付けます。

確認試験

補強材全数の3%以上、且つ3本以上を行います。

支圧板設置

斜面上部に向かって、Y字形に取付けます。

ナット締付

支圧板が地山に密着するようにナットを締付けます。

ワイヤロープ取付

補強材を結ぶ正三角形の全ての辺を通るように設置します。
ターンバックルで、ワイヤーロープを緊張させます。

設置完了
Q4

補強材の打設予定位置に樹木があった場合、どうすればよいのですか?

A4

位置決めの要領は、次のとおりです(標準間隔2.0mの場合)。

  1. 三角形の1辺の長さが3mを超えない場所に移動させる。
    その際、三角形の3辺の合計長さが、7mを超えないようにする。
  2. 三角形の3辺の長さが7mを超える場合は、補強材を追加打設する。

Q5

削孔角度の管理は?

A5

削孔角度は、想定すべり面が直線すべりの場合はすべり面に対して直角(円弧すべりの場合は平均すべり面に対して直角)とすることを基本としています。

管理範囲としては、+2.5°~ -2.5°としています。

なお、縦断(斜面に向かって左右)方向については、管理基準はありませんが、支圧板の構造上±10°が限界となっています。

Q6

補強材の地上部の寸法(余長)は?

A6

補強材の地上部の長さ(余長)は、17cmとします。
なお、ナットの締付けによって支圧板が沈下しますので、現地の地質性状を確認して、予測される沈下量だけ短めの長さを、地上部の寸法としてください。

Q7

支圧板設置の際、地山の不陸に対する角度調整は可能ですか?

A7

角度調整は、±10°まで可能です。

Q8

スィベルを使用する理由は?

A8

スィベルは、削孔機のエアとは別に、ロッドに直接大量のエアを供給して、スライムを確実に排出するために使用します。

スィベルを使用すると、グラウトの品質が確実に向上しますので、スィベルの使用を標準としています。

Q9

「余長(残尺)」で、削孔長の管理ができますか?

A9

「設計・施工マニュアル(案)」に記載されている余長25cmは補強材が地山から出る頭部の長さを表示しているものです。
したがって、「補強材の余長(残尺)17cm」で削孔長の管理を行なわないでください。
(Q:E-10を参考にしてください。)

Q10

削孔長の確認方法は?

A10

削孔長の確認は自穿孔ロックボルトのセンター穴φ13mmに細めの検測ロッド(検尺棒)を挿入するなどの方法があります。

Q11

削孔長の限界はどれくらいですか?

A11

削孔長の限界は、土質や削孔機械によって一概にはいえませんが、これまでの実績では概ね6m程度です。

Q12

削孔時の騒音対策は?

A12

スィベルは、削孔機のエアとは別に、ロッドに直接大量のエアを供給して、スライムを確実に排出するために使用します。

スィベルを使用すると、グラウトの品質が確実に向上しますので、スィベルの使用を標準としています。

出典:近接施行技術総覧 1997年3月8日 (株)産業技術サービスセンター発行

(注)

  1. 音量(A)ホンは敷地境界線から30m距離における許容範囲限界音量で、この音量を超えることができない
  2. 1号区域:第1種住居専用地域、第2種住居専用地域、近隣商業地域、住居地域、商業地域、準工業地域、その他学校・病院等の周囲80mの区域
  3. 作業名のゴシック表示は特定建設作業
  4. 特定建設作業の届出はその作業開始の7日前までに届出をしなければならない
    ただし作業がその作業を開始した日に終わるものは届出をしなくてもよい
  5. 適用外 (1)町村・臨湊区域等 (2)作業を開始した日に終わる作業 (3)災害非常事態・道交法による夜間指定など
  6. ○印は適用除外に該当する規制内容で、●印は適用に該当する規制内容
Q13

グラウトの配合は?

A13

グラウトの配合は、時季や混和剤等によって判断する必要がありますが、一般的には次のとおりです。
(1) 使用セメントは、普通ポルトランドセメントを標準とし、必要に応じて早強ポルトランドセメントを使用します。
(2) 混和剤は、グラウトの諸性質を改善し、凝結および初期硬化の早さを調節するために用います。
混和剤の使用例を示します。

区分 名称 標準混和量
無収縮剤 タスコン セメント質量×11.4%
高性能減水剤 レオビルド4000 セメント質量×2%

(3) グラウトの配合は、設計基準強度(24N/mm2)を満足する配合にします。
注入前の試験練りで、フロー試験、圧縮強度試験等によってグラウトの流動性および圧縮強度を確認します。
なお、フロー値の管理値は、発注者の仕様書に基いて行なってください。
グラウトの配合例を示します。

水セメント比(%) セメント(C) 水(W) 減水剤レオビルド
(W+レオビルド)/C50 1,230kg 590.4ℓ 24.6ℓ
Q14

グラウトのリターンがない場合の処置は?

A14

グラウトのリターンがない場合の対策例を示します。

問題点 考えられる要因 対策例
リターンが確認できない 地盤内の空隙 ○所定の10倍程度のグラウトを注入する。
○グラウトの配合調整およびモルタルやファイバーグラウト材(繊維を極僅か混入)などを注入する。
○翌日、補強材の横から再度孔口まで注入する。
リターンは確認できるが、時間が経過するとグラウトが沈下する ○グラウトがどの位置まで注入されているか確認し、不足分を補強材の横から孔口まで確実に追加注入する。
Q15

グラウトのフロー値の管理範囲(10~22秒)は大き過ぎませんか?

A15

旧日本道路公団等の仕様書を参考にして決めた範囲です。大きな範囲で示したのは特殊モルタルや気温の影響を考慮したものであり、フロー値の管理値は発注者の仕様書に基いて行なってください。

Q16

グラウトの残材の処理方法と処理の歩掛は?

A16

グラウトの残材処理は、産業廃棄物処理の方法によります。
詳細は各発注機関にお問合せください。

Q17

注入後、支圧板を設置するまでの期間はどれくらいですか?

A17

グラウトが硬化して所定の強度を得た後に(一般的に、普通ポルトランドセメントは7日、早強セメントは3日)、支圧板を設置してください。 なお、ナットの締付は、所定の圧縮強度(24N/mm2以上)を確認した後に、行なってください。

Q18

シースの取付け方について

A18

シースは、グラウト注入直後、補強材頭部が8cm程度露出する状態でグラウト部に取り付けてください。

Q19

確認試験の方法とデータ管理表の作成について

A19

確認試験は、補強材の所定の設計引張力を満足しているかを確認することを目的として行なうものです。

試験方法を次に示します。

  1. 試験本数は、任意抽出で3本以上、かつ3%以上とする。
  2. 載荷試験荷重は、設計荷重とする。
  3. 載荷試験サイクルは単サイクルとする。
  4. 荷重増分は5.0kNずつとし、各段階での荷重保持時間は1分とする。
    ただし、最大試験荷重時のみ、保持時間を5分とする。
  5. 計測項目は、載荷荷重及び試験時間とする。
  6. 荷重-時間曲線図表を作成し、所定の設計引張力を満足するか否かを検証する。

Q20

ナットの締付荷重は設計引張力か、その50%程度でよいのですか?

A20

ノンフレーム工法における支圧板の効果は、グラウンドアンカーのようにプレストレスを与えることによる効果を考慮したものではなく、斜面変位により補強材が変形し支圧板が沈下しようとする際に生じる支圧板反力を、軸力として効果的に発揮させるためのものです。
したがって、締付は、斜面変位の可能な限り早い段階から地盤支持力が発揮できる荷重で行ないます。

この締付荷重は、Q:E-21をご参照ください。

Q21

ナットの締付管理は、どのように行ないますか?

A21

ナットの締付管理は、トルク値で行ないます。
ナット締付のトルク値は、「支圧効果が発揮できる荷重に相当するトルク値」と「施工実績から設定するトルク値」との、いずれか小さい方の値とします。

(1) 支圧効果が発揮できる荷重に相当するトルク値

支圧効果が発揮できる荷重は、予め実施した極限引抜試験より求まる、「支圧板沈下量-引抜荷重曲線」より求めます。
「支圧板沈下量-引抜荷重曲線」を図で示します。

自然斜面の表層土は軟弱多孔質であることが多いため、極限引き抜き試験における荷重-支圧板沈下量変位曲線は、S字曲線となることが多い。

ここで第一変曲点が、表層土の降伏荷重であるとすると、
この段階の荷重で支圧板を固定すれば支圧板の効果が効率よく発揮できる。

以下第一変曲点における荷重の求め方について説明する。

図は、ある現場で実施した極限引き抜き試験結果であり、荷重-と支圧板沈下曲線(A)より簡便的な手法により表層土の降伏荷重を求めた例を示している。

この例では、まず原点を通り荷重-支圧板沈下量曲線(A)に接する直線aを描く。
次に荷重-支圧板沈下量曲線(A)の第一変曲点以降の直線部を延長して、直線aとの交点を求め、この交点の荷重Pp:27kNを読みとる。

この他、logP(荷重)-logS(沈下量)曲線を描いて、変曲点の値を求める方法等があるが、これらの詳細は、地盤調査法(地盤工学会)「地盤の平板載荷試験」の章を参照されたい。

(2) 施工実績から設定するトルク値

ナットの締め付けは、地盤と支圧板を密着(なじませる)させ、支圧板の効果を斜面変位が小さい段階で発揮させるために実施するもので、補強材の設計引張力(Pri)が20kN以上ある場合は、これまでの施工実績から300N・mとし、徐々に締め付けるものとする。
ただし、補強材の設計引張力(Pri)が20kN未満の場合や表層土が軟らかく支圧板の沈下が著しい場合は、地盤と支圧板がなじみ、ガタつきがない程度のトルク値を監督員立会の下に適宜決定する。

<トルク値の求め方>
T=K×D×P×103
ここで、T:トルク値(N・m)
    K:トルク係数(0.51)
    D:補強材直径(0.0285m)
    P:引抜試験より求まる荷重;Pp(kN)支圧板沈下量-引抜荷重曲線より
      1本当り設計引張力;Pri(kN)

○トルク値算出例(引抜試験より求まる荷重、上図において27kNを採用した場合)
     T=K×D×Pp×103
     =0.51×0.0285×27×103
     =392(N・m)

Q21

支圧板の設置方向に決まりがあるのですか?

A21

原則として山側に向かってY字形に設置します。

Q23

地山の凹凸で、支圧板の一部が浮く場合の対処方法は?

A23

支圧板全体が地山に密着していることが必要です。
したがって、地山の凹凸で支圧板の一部が浮く場合は、次のように処置します。

(1)地面を整地する。
(2)モルタル等で不陸を調整する。

なお、これら処置方法については監督員と協議してください。

Q24

ワイヤロープの取付け方は?

A24

ワイヤロープは、支圧板(補強材)を結ぶ正三角形のすべての辺に1本(部分的には2本)通るように取り付けます。(施工図例参照)

<施工手順>

(1)アイボルトA側を3個の支圧板リブの切欠孔に順次通す。

(2)アイボルトAをターンバックルに適当な長さでねじ込む

(3)ビニルテープを外し、ワイヤロープをシンブルに沿わし、ロープ端部を引張ってクランプW管をシンブルの近くへ絞り込む。

(4)長さ調節後、クランプW管をハンディかしめ機で2箇所かしめる。

(5)ターンバックルでロープを緊張させる。
ワイヤロープは、スパナを用いてターンバックルを締め付けられる限度まで、緊張させます。

(6)ワイヤロープの折返し長は、10cm以上を目安としてください。
余ったワイヤロープの端部処理は、クランプW管からワイヤロープ端部までの2箇程度を、ビニルテープ等で固定する方法が容易です。

Q25

ワイヤロープの緊張時に支圧板が動いた場合の対処方法は?

A25

ワイヤロープの緊張時に支圧板が動いた場合は、ナットの締付トルクが不足している可能性がありますので、再度トルク値を確認してください。

Q26

ワイヤロープが岩や凸の斜面に接触してもよいのですか?

A26

ワイヤロープが岩や凸の斜面に接触しても問題ありませんが、鋭角な岩などにあたる場合には、ワイヤロープが破断しないように岩の角を落とすなどの工夫が必要です。

Q27

ワイヤロープが7mで足りない場合は、どうすればよいのですか?

A27

所定の補強材間隔を満足している場合であって、樹木や岩塊等の迂回によってワイヤロープが7mで不足する場合には、あらかじめ必要長さを手配します。

Q28

どのような足場が必要ですか?

A28

安全作業と施工品質を確保するために、補助レールを併用した削孔方法を標準としていることから、足場は1箇所あたり4m2(斜面勾配45°の場合4空m3)としています。

Q29

連続足場での歩掛はありますか?

A29

自穿孔方式ならびに単管削孔方式については、連続足場での歩掛はありません。
ノンフレーム工法は樹間での施工が前提であることから、連続足場の設置は困難なため、独立足場(単管足場)での施工を標準としています。

Q30

簡易な移動式足場の考え方は?

A30

現場条件によっては使用できるものが考えられると思いますが、安全関係規則も考慮して検討してください。

Q31

施工管理の内容について

A31

施工管理は、所定の品質の工事を、安全に、且つ、工期内に終了させるために実施するもので、

  1. 工程管理
  2. 品質管理
  3. 安全管理

があります。
いずれも、施工条件や施工規模等を考慮し、発注者の仕様書および監督員との協議により実施するべきものです。
標準的な施工管理の詳細については、「設計・施工マニュアル(案)」(H18.4版)p48~49をご参照ください。

Q32

施工時に下草や低木などを部分的に伐採しても、本工法の特徴を生かすことができますか?

A32

天然記念物など貴重植物の保護は勿論のこと、下草や低木に対しても、極力荒らさないように作業を配慮する必要があります。
また、部分的に伐採しても、切土による森林土壌の除去や根系の損傷を生じない本工法の特徴から、下草や低木の自然回復力を十分に期待できます。このことは既設現場の追跡調査で確認しております。

Q33

施工時に下草や低木などを部分的に伐採しても、本工法の特徴を生かすことができますか?

A33

排水工は、斜面の安定を損なう可能性の大きな地表水や地下水を速やかに集めて斜面外の安全なところへ排除したり、地表水・地下水の斜面への流入を防止して斜面の安定性を高めるとともに、他の崩壊防止施設の安定性を増すことを目的として用います。
したがって、対象とする斜面の調査段階において、その付近の気象・地形・地表面の被覆状況・土質や、地下水・湧水などを調査しなければなりません。また、工事施工中に思わぬ湧水・地下水が見つかったら、その都度適宜対応する必要があります。
なお、一般に下記のような場合に排水工を設置します。

  • 施工区域内に湧水がある場合
  • 施工周縁部から地表水が集中して流下する場合
  • 凹地形をなし、地表水が集中する場合
  • 地質が地表水の侵食に弱い場合
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