Q&A

その他

Q1

ワイヤロープが見え難くなると、足が掛かる危険性はありませんか?

A1

今までワイヤロープによる転倒等の事故は確認されておりません。
ただし、斜面内への立入りの状況に応じて、地元説明、注意看板、立入禁止標識、立入防止柵など、適切な措置を講じる必要があります。

Q2

ワイヤロープを張ることで、動物への影響はありませんか?

A2

今まで施工された現場の追跡調査で、鹿や兎などの動物が斜面内を移動している痕跡が見られますので、特に影響はないものと考えています。

Q3

グラウトの根系への影響はありませんか?

A3

本工法は、全国で多数の施工実績がありますが、植物の生長不良や立枯れなどが報告されていないことから、グラウトの根系への影響は殆ど無いものと判断しています。

Q4

材料搬入および現場内での小運搬の歩掛は?

A4

標準積算資料では、20m以内の小運搬を含んだ歩掛としています。
これ以外の搬入および小運搬については、その運搬条件に応じて積算されることとなります。

Q5

ワイヤロープは何年か毎に締め直しが必要ですか?

A5

通常は締め直しの必要はありません。
ノンフレーム工法においてワイヤロープは、大きな斜面変位があった場合に効果を発揮することが確認されています。また、施工数年後の追跡調査の結果でも大きな弛みは確認されていません。

なお、維持管理については、(Q:F-6)をご参照ください。

Q6

施工後の維持管理について

A6

ノンフレーム工法施工後の維持管理については、基本的には当該施設管理者が斜面防災関係について定めた管理要領に拠りますが、以下のことを参考にしてください。

  1. 点検の時期

    1. 通常時の点検は、のり枠工など他の法面工と同様とします。
    2. 豪雨や地震(震度5以上を目安として)などの後には、できる限り点検します。

    特に、施工地の周辺において、落石、斜面の亀裂・崩壊等の異常が発生した場合は、必ず点検するようにします。

  2. 点検項目と対処方法

    1. 現地踏査により点検します。
    2. 斜面変状の原因を調査し、適切な対策工を検討する。
    3. ノンフレーム工法における主な点検項目と対処方法は、次のとおりです。
主な点検項目 対処方法
斜面内の異常の有無
(亀裂、表土の侵食、湧水、等)
  • 状況に応じて、亀裂の拡大防止、緑化工や金網張り工等の法面保護工、水抜対策などの処置をする。
支圧板の浮き上がり
  • ナットを締め直し、地山に密着させる。
  • 再度浮き上がることがないように、法面保護工や、支圧板下にモルタルを充填する等の処置をする。
キャップの緩み
  • 防錆油の漏れがあれば補充し、キャップを増し締めする。
  • 支圧板の浮き上がりが原因の場合は、上記の処置も行う。
ワイヤの異常な緊張・弛み
  • 斜面内に亀裂・崩壊などの異常がないか点検し、異常がある場合は、亀裂・崩壊の拡大防止の処置をとる。
  • 弛みのあるワイヤは、ターンバックルにより適度に再緊張させる。
Q7

樹木の斜面安定効果について

A7

樹木の集まりである森林の効果、つまり樹木だけでなく樹木の下に生育する草本類・落葉・落枝に覆われた森林土壌までを含めた効果をもって森林樹木の斜面安定効果と考えられます。

その効果は大きくわけて次の二つです。

  • 表面侵食防止効果 : 斜面表層土壌の侵食を防止する効果.22m2)
  • 崖崩れ防止効果 : 土塊の崩落を防止する効果
  1. 表面侵食防止効果とは、
    斜面表層土壌の侵食を防止する効果をいい、具体的には下記内容等があげられていて、各研究機関における実験結果においても、森林の侵食防止効果が高いことが示されています。

    1. 樹冠、地表植生、落葉落枝が降雨のエネルギーを減少させて雨滴による侵食を防止する。
    2. 樹幹の地表面近くの部分、樹根地上部、地表植生等の地被物が地表流下水の流速を減じ、土壌分散、運搬作用を弱める。
    3. 地被物がフィルター効果つまり地表流下水に混入している土壌粒子をろ過するために、土粒子が土壌孔隙をふさいで浸透を悪化させることを防ぎ、地表流を減じて侵食作用を弱める。
    4. 落葉落枝は、土壌に有機物を供給して土壌微生物の活動を活発にするとともに、その結果生じる土壌孔隙を増加させて浸透を良好にして、地表流下水を減じ、耐侵食性土壌団粒を多くして侵食を防止する。
    5. 森林の根系は表層土を結合して耐侵食性を高め、根系の腐朽した穴を浸透水の経路となって地表流下水を減じ侵食作用を弱める。

    特に、施工地の周辺において、落石、斜面の亀裂・崩壊等の異常が発生した場合は、必ず点検するようにします。

  2. 崖崩れ防止効果とは、
    土塊の崩落を防止するということで、後述する1.~3等の理由により樹木の崩壊防止機能が認められてます。

    1. 前述の表面侵食防止効果により表面侵食に起因する崩壊を防止する。
    2. 根系は風化土層を緊縛して土塊強度が増し、また風化土と未風化の基岩との境界を漸移的にして崩落の危険を減少させる。
    3. 地上の樹幹部は、一度崩落した土塊を支え、崩落土の破壊力による二次的な崩壊を防止する。
      しかし一方、
    4. 透水性の高い土壌である故に土層が飽和状態になりやすい。
    5. 樹木の重さだけ荷重が増し、またその成長とともに重心が上昇する。
    6. 強風による樹木の振動で地盤がゆるむこと。また風倒木が生じること。
      等によって、斜面の安定を悪くする要因とする反論もあります。

崖崩れ等の斜面崩壊の発生は、降雨・地形・地質・地下水等の諸条件とも関連するところが大きいため、厳密に森林の影響だけを抜き出し難いが、各地の調査結果によると、比較的深さの浅い崩壊に対しては森林の斜面崩壊防止効果がかなり発揮されており、根系の届かない深い崩壊や地すべりに対しては地形・地質による影響が大きいとされています。

ノンフレーム工法は前述のように比較的浅い崩壊を防止する工法ですから、森林の持つ斜面安定効果を補完し、斜面安定を悪くする4~6の要因を補うところが大きいと考えられます。

なお、森林の斜面崩壊防止機能を数値的表現で表す研究も各研究機関で進められていますが、その主な要因である根系の評価は以下のような考えです。

一般に土のせん断強度は、クーロン式(下記参照)で示されます。

τf = C + (σ-μ) tanφ
τf : 土のせん断強度(破壊強度)
c : 粘着力(有効応力表示)
σ : 垂直応力
μ : 間隙水圧
φ : せん断抵抗角(有効応力表示)
斜面崩壊は、斜面土層内のせん断強度τfが、地下水位の上昇等によりその場所のせん断強度τより小さくなった場合に発生します。即ち、上式のφまたはcが大きければ、その斜面の安定性は高いと評価されます。
したがって、φまたはcに対して根系の影響があるということになりますが、どちらに大きく影響するものかについては現在のところ十分な結論を得ていません。しかし、現段階では、cの増加として作用していると考える人が多いようです。

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